「製品と商品の違い」について学んだ時の話。 | KIK

2022/02/10 11:45

先日、部屋の片付けをしていたら就活時代の痕跡が出てきて、それを眺めながら当時のことを色々と思い返していた。


私は理工学部の学生だったのだが、販売促進のアルバイトを通して広告・マーケティングの仕事に興味を持ち、そういう仕事に携われる会社にエントリーをいくつかした。


前職のマーケティング会社はその中の一つだった。


その出会いは今も鮮明に蘇る。


当時私は、リクナビを眺めていて「なんとなく面白そう」と思い説明会に申し込んだわけだが、同日、実はその会社の説明会の前に「別の会社の説明会」を入れていた。


しかし、朝寝坊をしてしまいその会社説明会に参加することができなかった。


強く罪悪感を感じた私は「もう一つの方はいかなければ・・・」と思い会場へ赴いたのである。


この順番が逆だったとすれば私は前職におそらく出会っていなかったのだ。


スタンフォード大学の教授で、キャリア論の研究で有名なジョン・D・クランボルツ教授の研究によれば「人生の8割は計画した通りにはいかない」という。


これについて私は「人生の8割は計画した通りにいかないのかもしれない。でも、計画した通りにいかない方が良いことも結構ある」という認識をしている。


参加した前職の会社説明会で印象に残っているエピソードといえば、社長がしてくれた「製品と商品の違い」の話になるだろう。


前方に立った社長は私たちに、


「商品と製品の違いはなんだと思いますか?」


という質問を投げかけてきた。


ポツポツと回答があったが社長の反応を見るにどれも的を得ていなかった。


かくいう私も答えることができなかった。


すると、社長はおもむろにとある会社のペットボトルのお茶を取り出し、ベリベリーッとそのパッケージを剥がし始めたのだ。


すると「これが製品です」と言った。


そして、パッケージを剥がす前のペットボトルをもう1本持ってきて「これが商品です」と言った。


私も含むその会場にいた誰もがそのプレゼンテーションに大きな納得感を得ていたようだった。


社長は続けた。


「製品というのは「製造したモノ」のことです」


「つまり、製品は売れるか売れないかはまだ関係がありません」


「「良い製品」というのは製造した人にとって良いのであって、買う人にとって良いかどうかは分からない状態です」


「これに対して、商品は買い手がいることが前提となっているモノのことです」


「だから、良い商品というのは買い手にとって良いことを意味しているわけです」


「でも「どんな風によいのか」が買い手に分かってもらえないと買ってもらうことはできないですよね?」


「良いかどうかを理解してもらえなければそれは商品にはならず製品にすぎないということです。」


「何が言いたいか分かってきましたかね?」


「要するに、商品というのは「製品+コミュニケーション」のことなんです」


「コミュニケーションがなければ商品にはなりません。」


こう言って、再びパッケージの剥がされたペットボトルのお茶とパッケージが付いたペットボトルのお茶を私たちの前に出した。


社長は、私たちの会社は、こういう「商品開発」のお手伝い、つまり買ってもらいたい人に買ってもらえるようなコミュニケーションの開発のお手伝いをしたりする会社です、と教えてくれた。


説明会終了後、私は何度かの選考を経てこの会社に入社することとなった。


入社を決めた理由はそれこそいくつかあるが、社長が説明会の時にしてくれた「製品と商品の違い」の話がフックになったことは間違いない。


そして、今は自分が誰かに話す一つのネタとして有難くストックさせてもらっている。


商品と製品。


似ているようでその内容は全然違う。


言葉の持つ意味を正確にとらえると物事の見方が変わる、こういうことも同時に学んだとても良い日だったと記憶している。


(文・写真:Tanaka Shingo