「緑の処方箋」が拡がっていく可能性を感じている。 | KIK

2021/10/10 10:00


少し前に興味深い記事を読んだ。


スコットランドの一部地域で行われていた薬を処方する代わりに緑あふれる自然の中ですごすことを推奨する通称「緑の処方箋」が、イギリス全域で試験導入されたというもの(*1)。


「緑の処方箋」は、スコットランドの鳥類保護協会のカレン・マッケルビーさんが呼び始めたものである。


「緑あふれる自然の中での活動が健康にいい」というのは人間が持っている共通感覚と言っていいだろう。


最近これが研究結果によっても正しいことが明らかになってきているのだ。


要するに、緑の処方箋を処方して実際に効果が現れている、ということである。


処方の内容は「植樹の手伝い」や「緑地で時間を過ごす」。


「薬」と呼ぶにはどうもしっくりこないところもある。


しかし、この処方によって、


「高血圧や呼吸器・心血管疾患の症状や不安の軽減」


「集中力と気分の向上」


「生活の満足度と幸福度の増加」


といった効果がみられ、処方をうけた人のうち63%はより活発に活動するようになり、46%は体重が減ったという研究報告が出ているのだ(*2)。


医師たちもこの効果を認めており、


「最小限の費用とわずかな時間で、気分のよくない原因の解決策となる可能性がある」


などコメントを残している。


そして冒頭の話に戻るが、このスコットランドの一部地域ではじまった「緑の処方箋」が、その輪を拡げイギリス全土に拡がっている、というのだ。


新型コロナウィルスの流行もあって「外で」という点も大きいのかもしれない。


何にせよこの「緑の処方箋」の動きは私たち日本人にとっても注目に値するだろう。


私自身はイギリスを訪れたことがないため、どの程度の自然環境が揃っているのか不確かなところはあるが、少なくとも日本は、国土の森林が7割で、30,000箇所以上源泉があり、海に囲まれ、河川が豊富な「自然大国」である。


したがって、国内でも「緑の処方箋」が実行できる可能性は十分にある。


実際、私の知り合いの医師には地域にある自然の恵みを活かして、上質なリトリートサービスを展開している方がいる。


(リトリート:仕事や日常生活から一時的に離れ、疲れた心や身体を癒す過ごし方)


先日もそこにお邪魔してきたばかりなのだが、まさに「緑」が処方箋になっていると感じたばかりだ。


澄んだ空気の中、針葉樹と広葉樹の混合林でできた森を抜け、途中、湧水もいただいた。




その医師の行動や姿勢は、都市部に勤務する従来の医師のイメージからはあまりにもかけ離れている。


だが、これからの社会にはこういう医師がもっといて欲しいと私は切に思う。


なぜならこれだけの自然資源が日本にはあって、それにより身体のコンディションもよくなるのだから。




近代医学の父と呼ばれるヒポクラテスは、


「人間は自然から離れるほど健康から遠ざかり、やがては病気になってしまう」


ことを初めて指摘した人物である。


いにしえのヒポクラテスの指摘が、「緑の処方箋」という形で現代社会に拡がっていく可能性を感じているのは多分私だけではないはずだ。


今後の自然と医療の動きにも注目していきたい。


*1 心身ともに健康になりたいならハイキングがオススメ、その理由は?


*2 薬の代わりに処方される「緑の処方箋」とは?


(写真・文 Tanaka Shingo